東京都では、東京と他の地域が、それぞれの持つ力を合わせて、共に栄え、成長し、日本全体の持続的発展へとつなげていく「共存共栄」を目指しています。
そのために、東京都では、東京だけでなく他の地域の発展にも結びつく様々な施策に、各自治体と協力して取り組んでいます。その取組の一環として、全国の自治体へ直接訪問し、東京都との連携や政策全般にわたる意見交換を積極的に行っています。

令和7年11月10日(月)に青森県を訪問しましたので、その様子をご紹介します。

青森に向けて出発!

東京から新幹線・バスで約4時間、JR青森駅に到着!
この日は1日を通して断続的な雨、そして冷たい風が強く吹き、東北ではすでに冬が始まっていることを実感しました。

25110_1.JPG
青森駅から徒歩約5分の青森駅前ビーチ。一瞬の晴れ間を押さえた

午後の青森県庁訪問の前に、腹ごしらえです。

25110_2.JPG
25110_3.JPG

3種のまぐろが乗った贅沢などんぶりと、外はパリパリ、中はふわふわのさば塩焼き。これからの行程の活力になりました!

青森県庁へ

冷たい雨の中、歩いて青森県庁に到着。一方で到着時には青空が見える、不思議な天気です。

25110_4.JPG

令和7年、青森県にとってこの年は「りんご植栽150周年(外部サイト)」という記念イヤーで、県庁舎にもお祝いの横断幕がかかっていました。庁舎の目の前に県内の主要な品種のりんごの木も植えられていて、まさに「県の顔」として活躍しています。

25110_5.JPG
県庁敷地内に植えられた様々な品種のりんごの木

ほどなくして、意見交換の時間になりました。
今回は、総合政策部の皆様にご対応いただきました。
お忙しい中、お時間をいただき誠にありがとうございました。
意見交換では、東京都が実施する連携事業をご紹介するとともに、青森県の政策について幅広くお話を伺いました。ここではご紹介いただいた県の政策のうち3つをピックアップします!

【若者支援】

青森県は基本計画『「青森新時代」への架け橋(外部サイト)』の中で2040年のめざす姿に「若者が、未来を自由に描き、実現できる社会」を掲げるように、若者を重視した施策を展開しています。でもこれは、決して若者だけを支援するという意味ではありません!
県内の人口減少を背景に、青森県は若者に選ばれる、魅力ある県にしていくことが重要と考え、「若者が地元で働き続けられる環境づくり」を最大の課題と捉えています。県内で若者の活躍の場が今以上に増えれば、キャリアデザインやライフデザインの幅が広がり、彼らが夢を描ける社会が実現する。そのエネルギーが他の世代にも波のごとく広がり、県内のすべての人がより良い未来を創ることができる。若者への支援は全世代の支援につながる、そんな信念の下、施策を進めています。
現在、都内の大学との協定やインターン、就職説明会などを通じて、進学で県外に転出した若者が青森に戻ってくる仕組みづくりを進めているとのことです。

全世代を対象とした興味深い取組についてもご紹介します。先ほどご紹介した『「青森新時代」への架け橋』の基本理念は「AX~青森大変革~」。青森県の課題解決に向けて、県だけではなく、県民にも社会経済環境の変化に合わせた行動を起こしていくことを呼び掛けています。そのための基盤として「挑戦」「対話」「DX」を掲げていますが、このうちの「対話」については、知事が出向いて県民の声を直接聞く、県民対話集会「#あおばな」(外部サイト)を定期的に開催しています。県民との対話を踏まえて、県政の課題等を把握し、施策の方向性を定めています。実際に「#あおばな」をきっかけに、新規に事業化された事例もあります。

【観光振興】

白神山地や奥入瀬渓流をはじめとした自然や、ねぶた祭をはじめとした伝統文化など、日本を代表する観光名所が青森県にはいくつもあります。そんな魅力だらけの青森県はインバウンドも好調で、最近はアジアを中心に増加している一方、人口減少により国内旅行者の母数が減少する中でも、国内からの旅行者をしっかり確保していくことが課題として認識されているようです。青森県の観光客の約9割は国内旅行者であることから、いかにして足を運んでもらうか、取組を進めています。
その一環として、12月から3月まで「青森県・函館観光キャンペーン」を実施し、冬の観光誘致を図っています。それ以降も、県内の多様な地域資源を活かした魅力的な観光キャンペーンを企画し、青森県の観光を盛り上げたいという意気込みを伺いました。

青森県観光情報サイト「Amazing AOMORI」(外部サイト)

【りんご農業の改革】

冒頭でも触れた、青森の顔であるりんご。国内では60万トン余りが生産されていますが、その約60%を青森県産が占めています。また、日本から海外に輸出されるりんごは9割以上が青森県産で、台湾では「青森りんご」という言葉が認知されているほどの人気ぶりです!

そんな青森のりんごも、深刻な担い手不足や気候変動により、生産量が減少傾向にあります。今後も現在と同じ水準の生産量を維持するためには、担い手の規模拡大を進めるとともに、新規就農者を確保することが必要不可欠とされています。
この危機に立ち向かうべく、青森県は「青森りんご総合戦略(外部サイト)」を策定し、様々な取組を始めています。その一つが栽培方法の改良による生産の高度化・効率化です。省力化や収量の増加が期待できる高密植栽培という生産性の高い栽培法について、青森型の栽培体系の構築を進めながら普及を推進しているとのことです。他にもDXの導入による生産効率の向上等に取組んでいます。

りんご栽培に携わる人の確保は依然厳しい状況にありますが、少しずつ変化も見られます。これまでりんご農家は個人経営がほとんどでしたが、最近は農業法人も増え、経営主体が多様化しています。さらに、農業法人に就職した人がその後独立し、農園を開く事例も増えていて、これが担い手の確保に貢献しているという明るいニュースもあるそうです。

この他にも、スタートアップの取組など、たくさんのお話を伺うとともに、様々な分野での連携の可能性も見つけることができ、充実した意見交換となりました。
青森県庁の皆様、ありがとうございました。

青森県ホームページ

りんご研究所へ

さて、青森県庁を後に車で小一時間。次に向かったのは、地方独立行政法人 青森県産業技術センターの「りんご研究所」です。

25110_6.JPG
昭和6年に建てられた旧研究施設。現在は史料館として使われている

「青森りんご植栽150周年」を記念して、県内では年間を通してたくさんのイベントや記念商品の販売が行われてきました。長きにわたり、県民はもちろん、国内外の人々に愛される青森りんごのおいしさのルーツは、ここ「りんご研究所」にあります。

りんご研究所は、昭和6年に青森県苹果へいか試験場として設立。以来94年間、りんご生産を生産者とともに守ってきました。
施設内には広大な農園もあり、1世紀近くにわたるノウハウが詰まった現場を見学させていただきました。

25110_7.JPG
昭和6年に建てられた旧研究施設。現在は資料館として使われている

まず案内されたのは草生区と呼ばれるエリア。研究を通して、土を露出させず草で覆うことで、養分の流出を防ぎ、土壌を安定させる効果があることが分かり、それ以来りんごの栽培はこれを基本としているそうです。実際、敷地内の農地は草で覆われていました。

ここで育てられているのは「国光こっこう」。現在広く流通している「ふじ」のお母さんにあたり、所内には樹齢125年の木も残っています。国光はアメリカ原産で明治4年に日本に導入されました。導入当初は名称が統一されておらず、栽培地域ごとに様々な名称で呼ばれていましたが、明治44年に大正天皇御成婚にあやかり「国光」に名称統一。収穫時期が11月で雪が降ったあとに収穫されることもあったため、青森県では「雪の下」と呼ばれていたそうです。第二次大戦前から1950年代にかけて「紅玉」と並ぶ二大人気品種で、最盛期には青森県の生産量の約6割を占めていました。
しかし、1960年代からみかんやバナナに押され価格が暴落、また、品種改良された「ふじ」に主力品種の座を取って代わられ、現在は青森県でもほとんど生産されていません。
現在の品種に比べると甘さ控えめ、酸味があってさっぱりとした美味しさで、その味を懐かしむ方も多いそうです。

次に案内していただいたのは「マルバ台」と「高密植栽培」のエリアです。

25110_8.JPG
マルバ台
25110_9.JPG
高密植栽培

マルバ台は現在県内で最も多く取り入れられている栽培法で、りんごの接ぎ木の台木にマルバカイドウというりんごの仲間の野生種の木を使用しています。その特徴は生育が良く、樹が大きくなるところにあり、一つの木から収穫できる期間も長く、経済寿命に長けているという利点もあります。一方で、生育が良いことから樹高が高くなり、剪定、摘果、袋掛け、収穫などがすべて高所での作業となるため、安全上の課題があるとされています。また等間隔に植えられていないことが多いため、機械が入れず、作業効率を上げるには人手が必要という欠点もあります。
これを解決すべく、新たな栽培方法として注目されているのが高密植栽培です。
高密植栽培は面積当たりの収量が多く、また、マルバ台に比べ早い段階で収量が多くなることから、その生産性の良さが特徴です。また、マルバ台と異なり、並木植えで平面的な構造のため、機械が入りやすく、限られた人手でより効率的に安全に作業できるという利点もあります。一方で、マルバ台に比べ木が細く、支柱が不可欠であることから、その分のコストが発生します。また、青森県では高密植栽培が比較的新しい栽培方法で、木の経済寿命が不明であることや、りんごの品質に関するデータが不十分であることから、導入へのハードルが高く受け止められるという現状があるようです。
より安全に、より美味しいりんごを、より効率的に生産すべく、りんご研究所とリンゴ農家の試行錯誤は続きます。

次に案内していただいたのは「CA貯蔵庫」です。どんな貯蔵庫か想像が難しいですが、実は私たち消費者にとって非常にありがたい存在です。

25110_10.JPG
CA貯蔵庫の外観
25110_11.JPG
CA貯蔵庫の内観

CA(Controlled Atmosphere )貯蔵とは、温度管理だけでなく、酸素と二酸化炭素の濃度を調整することで、りんごの呼吸量を抑える貯蔵方法です。呼吸することでりんごは自ら老化を進めてしまうので、CA貯蔵によってりんごを眠らせ、品質の劣化を防ぎます。これにより、りんごは夏など旬を過ぎても市場に出荷することができ、私たちは1年中美味しいりんごを味わえるのです。りんご研究所ではCA貯蔵庫内でりんごを試験的に貯蔵し、品種ごとにベストな温度や窒素・二酸化炭素の濃度を確かめたり、そもそもCA貯蔵庫に適した品種なのかなどを調べたりしているそうです。

そして、視察の終盤に興味深いお話を伺いました。
青森県では約50の品種が栽培されていますが、実際に生産されているのは圧倒的な割合でふじが多いです。ふじの甘くてシャキシャキとした食感が多くの人に支持されていること自体はりんご研究所としても喜ばしいことですが、実はそこにも課題があります。1点目は、ふじは栽培に手間がかかるため、今後人手不足が進んだ場合に同じ品質と生産量を保てない可能性が危惧されていますが、人気品種であるため手間のかからない新しい品種への生産のシフトが進まないことです。2点目は、特定の品種に生産が偏っていると、未知の病気などによる全滅や消費者の嗜好の変化など市場ニーズの変化が起きた場合に生産者が対応できなくなるリスクがあることです。こうした課題を踏まえ、りんご研究所としても、多様な品種をバランスよく生産できるよう努力したいと考えています。

この他にも、更なる栽培方法の試行や病害虫対策、益虫の授粉管理などについてご説明いただきました。
普段の生活ではなかなか気づかない点に焦点が当たり、多くの学びがありました。

りんご史料館は一般公開もされているので、150年にわたる青森のりんごの歴史を体感してみてはいかがでしょうか?

りんご研究所ホームページ

さて、翌日は新幹線で南下し、宮城県を訪問します。
次回の訪問レポートもどうぞお楽しみに!