東京都では、東京都と他の地域が、それぞれの持つ力を合わせて、共に栄え、成長し、日本全体の持続的発展へとつなげていく「共存共栄」を目指しています。
そのために、東京都では、東京だけでなく他の地域の発展にも結びつく様々な施策に、各自治体と協力して取り組んでいます。その取組の一環として、全国の自治体に直接訪問し、東京都との連携や政策全般にわたる意見交換を積極的に行っています。

令和8年5月21日(木)から22日(金)にかけて奈良県を訪問させていただいたので、その様子をご紹介します。

奈良に向けて出発!

東京から奈良県までは、列車で約3時間半。
東海道新幹線で京都駅に行き、在来線に乗り換えて奈良駅へ向かいます。

奈良に到着!「奈良うまいものプラザ」でランチ

奈良県に到着して最初に訪れたのは、JR奈良駅構内にある「奈良うまいものプラザ」です。奈良うまいものプラザは、奈良県の農と林と食の魅力を伝えるアンテナショップとして、2014年の春にオープンしました。

奈良県での最初の食事は、店内の「農園直送レストラン『古都華(ことか)』」でいただきます。
今回は、奈良名物の「三輪にゅうめん」をいただきました。コシの強いそうめんの喉ごしと、出汁の効いた温かいおつゆの組み合わせが最高でした!

写真:奈良県桜井市三輪が発祥とされる「にゅうめん」
奈良県桜井市三輪が発祥とされる「にゅうめん」

食後には、店内の「特産品販売コーナー」にも立ち寄らせていただきました。
大和野菜をはじめとする県産農産物や吉野の木材を使用した木製品、古くから愛されてきた麻製品など、奈良が誇る特産品が所狭しと並んでいました。

「NARAMILE」へ

奈良駅からバスで県庁前に向かいます。
奈良県庁の皆様との意見交換前に、県庁からほど近い奈良公園バスターミナル東棟の2階にある「NARAMILE(ナラマイル)」を視察しました。

写真:特産品販売コーナー
午後8時まで営業しているため、旅の終わりにお土産を購入することができます

NARAMILEは、奈良の地酒や特産品を通じて、人、文化、歴史をつなぎ、新しい奈良の魅力を発信する施設です。店内には県内の蔵元による地酒や伝統工芸品、銘菓、茶葉などがそろい、奈良公園や東大寺、春日大社を巡る観光客にとっては、旅の始まりにも締めくくりにも立ち寄りやすい場所となっています。
奈良の地酒や工芸品を1か所で楽しめるNARAMILEは、文化や歴史に加えて、食や産業の魅力を体感できる新たな観光拠点として期待されています。奈良県を訪れる観光客には、日帰りや夜間は県外に宿泊するという人も少なくありません。そこで奈良県では、ナイトコンテンツの強化をはじめとする観光客の夜間滞在促進にも力を入れています。このNARAMILEも、その取組の1つとして設置されており、午後8時まで営業されています。

奈良県庁へ

奈良県庁へ向かうと、県庁前の芝生にたくさんのシカの姿があり、奈良県ならではの風景が広がっていました。正面玄関では、奈良県のマスコットキャラクター「せんとくん」が出迎えてくれました。

写真:県庁前には野生のシカ
県庁前には野生のシカが...!

奈良県庁では、知事公室長を筆頭とする知事公室の皆様と意見交換をさせていただきました。
お忙しい中、お時間をいただき誠にありがとうございました。

意見交換では、東京都が実施する連携事業を紹介するとともに、奈良県における課題やその解決に向けた取組といったお話しを伺いました。ここでは、伺ったお話から2つをピックアップします!

【林業】

奈良県の林業は、吉野杉に代表されるような木材生産に強みがあります。県内の吉野や桜井、神殿といった地域では製材なども盛んです。
しかし、近年はこうした林業における担い手不足が深刻になってきています。また、海外から輸入される木材との価格競争や、奈良県の急峻な山の地形が理由で木材の運び出しに費用が嵩むといった課題もあります。
ただし、一方で、奈良県立の林業大学校「奈良県フォレスターアカデミー」を2021年に開業して林業の担い手育成にも力を入れているほか、最近では林業に興味・関心を抱いて奈良県に移住する人が増えているなど、今後の林業の持続可能性を高める動きもあります。

【観光】

新型コロナウイルス感染症の影響で、一時期はインバウンド観光客がほぼゼロになるまで減少していました。しかし、今ではコロナ禍以前の水準以上に観光客数が増加しているそうです。
観光における課題としては、夜間に観光客が県外に流出してしまうことが挙げられました。
奈良県ではそれに対する策略として、県南部の地域に観光客を誘客することでその流出を防ぐという方策も検討しているとのことでした。また、インスタグラムやLINEをはじめとするSNSが持つそれぞれの特性を活かした広報戦略の取組も進めていき誘客につなげていくそうです。
「飛鳥・藤原の宮都」の世界文化遺産登録を契機に、世界遺産を軸としたプロモーション戦略も今後検討していくとのことでした。

意見交換では、歴史文化資源を生かした地域振興、観光誘客、食と農の振興、世界文化遺産登録を目指す取組など、奈良県ならではの強みをどのように磨き上げ、国内外へ発信していくかについて、貴重なお話を伺うことができました。
東京都としても、全国各地との共存共栄を進めるうえで、地域資源を生かした魅力発信や広域的な連携のあり方を考える大変有意義な機会となりました。

「平城宮跡歴史公園『平城宮いざない館』」へ

「平城宮跡歴史公園」に到着すると、最初に「朱雀門」が目に留まりました。朱雀門は、平城宮の南面中央に位置していた正門です(現在の朱雀門は1998年に復原)。平城京の入口からメインストリートである朱雀大路を北へ進んだ先に突き当るのがこの門でした。

写真:復原された朱雀門
復原された朱雀門からは、奈良時代の都の息吹を感じます

平城宮跡歴史公園は、奈良時代の都・平城京の中心であった平城宮跡の保存と活用を通じて、奈良時代を今に感じる空間を目指して整備が進められている国営公園です。また、平城宮跡は世界遺産「古都奈良の文化財」の構成資産の1つとして登録されています。

今回訪れた「平城宮いざない館」は、平城宮跡歴史公園内にあり、平城宮跡の多彩な魅力を発見できるガイダンス施設です。復原模型や大型映像、出土品・資料の展示などを通して、1300年前の平城宮の様子や当時の人々の暮らし、ものづくりの技術を分かりやすく学ぶことができます。

「奈良県コンベンションセンター」へ

平城宮跡歴史公園を後にした一行が向かったのは「奈良県コンベンションセンター」。
同施設は、最大2,000人規模の大会議場を備えたコンベンション施設を中心に、県産品や県産食材を活用した物販店舗や飲食店舗等を備えた観光振興施設などによって構成されている、奈良県最大のMICE・滞在型観光・交流の拠点です。

奈良県は、吉野杉や吉野桧をはじめとする高品質なスギ・ヒノキの産地でもあることから、この施設では県産木材が随所に活用されています。なかでも、コンベンション施設と観光振興施設の間にある「天平広場」の大屋根には奈良県の吉野杉が用いられており、天平文化をモチーフとしたデザインと木の質感の調和によってとても印象的な空間となっています。

こうした奈良らしい意匠に溢れる奈良県コンベンションセンターは、「ウッドデザイン賞2020」優秀賞(林野庁長官賞)を受賞するなど、木材の活用事例としても高く評価されています。

今回の奈良県訪問1日目の行程はここまで!
2日目は、奈良盆地南部エリアを中心に視察を行います。

道の駅「なら歴史芸術文化村」へ

奈良県訪問の2日目。
この日、最初に視察に伺ったのは「なら歴史芸術文化村」です。
なら歴史芸術文化村は、歴史、芸術、食と農など奈良県の誇る文化に触れることができる4棟の建物から構成される多機能複合施設で、施設全体が「道の駅」としても登録されています。
「『なぜ?』が芽生える。『知る』を楽しむ。」をコンセプトに、専門家や参加者との対話、体験を通じて知的好奇心を広げることで学びを深めるプログラムを実施しています。

①文化財修復・展示棟

文化財修復・展示棟では、文化財4分野(仏像等彫刻、絵画・書跡等、歴史的建造物、考古遺物)の修復工房が公開されています。各工房では修理作業を通年で公開しており、本物の文化財の修理作業をガラス越しに見学することができます。

写真:文化財の修理作業
普段あまり見ることができない文化財の修理作業を見学することができます

また、この棟の地下1階には企画展示室もあり、私たちが訪問した際は「仁王さんと當麻曼荼羅」と題した修理完成記念展が開催されており、一行も展示を拝見させていただきました。修理前に像の頭部にミツバチの巣が作られていたことから「ミツバチの仁王さん」として親しまれている當麻寺金剛力士像のうちの吽形像(當麻寺所蔵)と、5年にわたる修理が完了した當麻曼荼羅図(當麻寺奥院所蔵)を間近に見ることができました!

このほか、学芸員による修復工房見学ツアーやワークショップなども行われており、奈良県の歴史文化を後世につなげるべく、文化財保護への理解を深める入口となっています。

②芸術文化体験棟

芸術文化体験棟では、アーティストとの交流や幼児向けアートプログラムの実施、県民等の芸術文化活動の場として活用できるホールなどがあります。
特に、幼児向けのアートプログラムについては、専用のスペースがあり、プログラムに参加した子ども達が集中できるようになっています。作品の完成を一番の目的とせず、創作する過程を大切にすることで子どもの発想や個性を尊重するプログラムが開催されています。

写真:幼児向けアートプログラム
幼児向けアートプログラムのためのスペースも整備されています

③交流にぎわい棟

交流にぎわい棟には、県内の農産物や工芸品等を販売する直売所や、県産食材を使った料理を楽しめるレストラン・カフェなどが備わっています。2階には調理実習室や多目的室もあり、奈良県の食や農、伝統工芸を体験することができるセミナーやワークショップが行われます。
観光客だけでなく、地域の方々にとっても、奈良の魅力に触れられる交流の場となっています。

写真:直売所には奈良県にゆかりのある品がぞろり...!
直売所には奈良県にゆかりのある品がぞろり...!

④情報発信棟

情報発信棟では、観光案内や施設案内を行うコンシェルジュが常駐しているほか、県内の観光情報や道路交通情報などを発信しています。また、「道の駅」として、24時間利用可能なトイレやベビーケアルーム、電気自動車用の充電スタンドも整備されています。
情報発信の場として、観光情報や歴史文化資源、芸術など幅広い情報を入手することができます。

写真:道路交通情報
定点カメラによって道路交通情報がリアルタイムで配信されています
「奈良県立なら食と農の魅力創造国際大学校(NAFIC)」へ

なら歴史文化芸術村を後にした一行は、「なら食と農の魅力創造国際大学校(通称:NAFIC(ナフィック))」へ向かいます。今回は2つの校舎のうち、桜井市高家にある安倍校舎にお邪魔しました。
NAFICに到着した一行は、はじめに、NAFICの附属セミナーハウスである「ホテル 奈良さくらいの郷」へ向かいました。この日の昼食は、この施設の中にあるカフェレストランでいただきます。

今回、筆者は「ヤマトポーク黒毛和牛の自家製手ごねハンバーグ(おろしポン酢&デミグラスソース)」のランチセットを注文しました。スープ、サラダ、ライスに加えて食後のコーヒー(または紅茶)が付いてきます。

昼食を終え、一行はNAFICの校舎に向かいます。

写真:校舎の正面入口
校舎の正面入口

NAFICは、県立の2年制専門学校です。奈良県では農業の6次産業化の推進と奈良の美味しい「食」づくりに取り組んでいますが、ここNAFICは、そうした取組をさらに推進するための人材養成拠点として2016年4月に開校しました。
NAFICには「フードクリエイティブ学科」と「アグリマネジメント学科」の2つの学科が設置されていますが、この学校の特徴として、食と農のプロフェッショナルを育成するための「実践的なカリキュラム」と「充実した施設環境」が挙げられます。

フードクリエイティブ学科では、農業や農産物に関する知識を持った「食の担い手」の育成を目指しています。1人1ストーブ(コンロ)方式での調理実習によって、指導講師から個別に調理指導を受けることができ、さらに調理に関する全工程を1人で完結させるための技術も修得することができます。多くの調理学校は、1つのストーブ(コンロ)を複数人共同で使用しているため、このような充実した環境はNAFICの特色となっています。

写真:設備が充実した調理実習室
設備が充実した調理実習室

加えて、校内にはオーベルジュ(宿泊施設を備えたレストラン)もあるため、料理・サービス提供に関する実践実習の経験も積むことができます。食材を生かす調理技術のみならず、なんと、もてなしの力も学校で身に付けることができるのです。

また、アグリマネジメント学科では、高度な農業技術と農業経営センスを備えた「農の担い手」の育成を目標としています。栽培技術に加え、流通、販売、経営、マーケティングなど、農業経営者として必要な幅広い知識を実践的に学ぶことができます。

今回、我々がお邪魔した安倍校舎は、「フードクリエイティブ学科」のキャンパスとなっています。
一行はキャンパス内の校舎にて、校長と副校長から奈良県における「食と農」に関する取組とNAFICの特徴に加えて、卒業生の進路に関するお話も伺いました。
卒業生の中には、県内で、オーベルジュを開業・経営している方や空き家をリノベーションしたレストランを経営している方のほか、生産者としてエディブルフラワー、ハーブ、マイクロリーフの栽培・販売を行っている方もいるとのことです。
NAFICでの学びが、地域における新たな挑戦や活性化につながっていることがとても印象的でした。

校長と副校長のお二方からお話しを伺った後は、校内を案内していただきました。
お忙しい中、ご対応いただきありがとうございました。

「飛鳥・藤原の宮都」が世界文化遺産に!

奈良県、橿原市、桜井市、明日香村は、『飛鳥・藤原の宮都』の世界文化遺産登録を目指して様々な取組を進めてきました。「飛鳥・藤原の宮都」は、宮殿・官衙跡や仏教寺院跡、墳墓など19の構成資産で成り立っています。

そして・・・
令和8年7月26日(金)、韓国・釜山で開催された第48回ユネスコ世界遺産委員会において、「飛鳥・藤原の宮都」が世界文化遺産に登録されました!!
日本の世界遺産としては27件目の登録、奈良では4件目の世界遺産登録となります。
「飛鳥・藤原の宮都」は、6世紀末から8世紀初頭にかけて、日本列島で初めて中央集権体制に基づく宮都が誕生した過程を、2つの宮都の変遷を通じて示す貴重な遺跡群として、世界文化遺産に登録されました。

今回の訪問は、「飛鳥・藤原の宮都」が世界文化遺産登録される以前に実施されたものですが、
6月6日時点で世界遺産委員会の諮問機関であるイコモスによる評価結果として世界遺産一覧表への「記載」が適当とされていたことから、世界文化遺産登録を見込んで、構成資産の一部への視察も行いました。
今回の訪問では、「飛鳥・藤原の宮都」の19ある構成資産のうち、「高松塚古墳」と「藤原宮跡」の視察を行いました。

「高松塚壁画館(高松塚古墳)」へ

NAFICを後にした一行は、県内を南下し、彩色壁画で知られる高松塚古墳へ向かいました。
高松塚古墳は、国営飛鳥歴史公園内の高松塚周辺地区の東に位置しています。公園の駐車場からしばらく歩くと、古墳が見えてきました。

写真:高松塚古墳の外観
高松塚古墳の外観(内部は保存上の観点から公開されていません)

この古墳は、藤原京の時代(7世紀末から8世紀初め)に築造された終末期古墳で、1972年に橿原考古学研究所の調査によって極彩色の壁画が発見され、その後広く知られるようになりました。発見された壁画は、国宝に指定されており、保存上の観点から一般には公開されていません。
しかしながら、高松塚古墳には「高松塚壁画館」が隣接しているため、ここで、石槨内部の模型や壁画の忠実な模写・模造とその完成までの過程に関する資料、副葬品のレプリカなどの展示を見ることができます。
今回の視察では、この壁画館に入館しました。

写真:原寸・原色で再現された彩色壁画
館内には原寸・原色で再現された彩色壁画が...!

館内の展示からは、奈良時代の人々の美意識や東アジアとの文化的交流を感じるとともに、貴重な文化財を保存し、未来へ伝えていくことの大切さを改めて感じました。

「藤原宮跡」へ

今回の奈良県訪問で最後に訪れたのは、「藤原宮跡」です。
藤原宮跡は、藤原京の中心に置かれた宮殿跡です。藤原宮は、大和三山に囲まれた平野部に位置していましたが、中央には政治を行う施設である大極殿や天皇の住まいである内裏を設置し、周囲に朝堂院や役所を集約することで、中央集権体制を体現していました。

写真:朱塗りの列柱の再現
朱塗りの列柱の再現が藤原時代の姿を伝えています

飛鳥の地で進められた国づくりは、藤原京において制度や都市構造として結実しました。東アジアとの交流を背景に、宮殿や寺院、古墳などが一体となって残るこの地域は、日本の歴史文化を理解するうえで欠かせない場所となっています。

結びに

2日間にわたる視察を通じて、奈良県が誇る歴史・文化、食と農、県産木材、観光・交流拠点など、多様な地域資源を生かした取組に触れることができました。
また、今回の世界文化遺産登録を機に、奈良県の歴史・文化が国内外に一層知られていくことが期待されます。

東京都は今後も、全国各地との共存共栄を目指し、地域の魅力発信や相互連携を幅広い分野で進めていきます。
次回の訪問レポートもぜひご覧ください!